マンション投資でも大丈夫?
東急不動産、東京建物も名乗りを上げた。
大手の不動産会社に対抗して、新興デベロッパーのジョイントコーポレーションやアーバンコーポレィションも参入を表明している。
三菱商事、丸紅、UBS、ゴールドマンサックスなど、内外入り乱れて、不動産投信に参入を狙う企業は多士済々である。 不動産投信のインパクトはハイテクを超えるひとたび不動産相場が正常な上昇軌道を回復すれば、株式市場の人気の主流は、歴史の浅いニューエコノミーから、歴史の古いオールドエコノミーへと傾斜するだろう。
その利益を丸の内の開発に投入した。 三菱地所が丸の内に保有する不動産の時価は二兆円とも三兆円ともいわれる。
かりに二兆円として、相場が一○%上下すると二○○○億円の含み益が増減し、二倍になれば二兆円の含み益が新たに創造される。 不動産相場がどんなに暴落しても、明治時代に構築した丸の内の不動産が簿価を割り込む恐れはない。
これほど巨大な利益の源泉を抱えた企業は他に存在しない。 日本の歴史の古い企業は多かれ少なかれ、巨大な不動産を保有している。
日本は過去一悲観論が充満しているが、もし不動産相場が一○%上昇すれば一○○兆円、史上最高値を更新すれば一○○○兆円の富を生み出す打ち出の小槌となる。 不動産相場が反騰に転じたとき、現在の資産デフレは資産インフレに変わる。
資産インフレが日本経済に与えるインパクトの大きさは、ハイテクやインターネットをけた違いに九○年代に不動産バブルが崩壊し、日本の不動産の時価総額は一○年間に一○○○兆円も激減した。 日本の国内総生産が五○○兆円だから、日本の企業と国民が二年間汗水たらした稼いだ売上高のすべてをドブに捨てたわけである。
その結果、不動産市場には先安感が充満し、資金がどんどん逃避した。 買い手不在のなかを不動産相場は音もなく暴落した。
銀行は企業に追加担保の差し入れを要求し、差し出せない企業からは、融資を引き上げた。 不動産市場から一方的に資金が減り、暴落が新たな暴落を誘発した。
その経過は典型的なデフレスパイラルで、日本経済は一○○○兆円の資産を失い、深刻な不況に落ち込んだ。 資本主義社会では緩やかなインフレスパイラルがもっとも理想的な経済成長を促す条件となる。
日本経済は戦後一貫してインフレ基調のなかで世界経済の奇跡と呼ばれる経済成長を遂げた。 九○年代の長期デフレは日本人にとって初体験であった。
いったんデフレスパイラルに落ち込むと、設備投資や消費の意欲が凍りついてしまう。 九○年代の不況は不動産相場の大暴落によって引き起こされた私はその後も一貫して不動産相場テコ入れの重要性を主張し、九五年以降は、不動産投信の導入を提案して、今日に至っている。
私の発想の原点を示すために、当時のコラムを引用、再録したい。 八年前に私が指摘した不動産市場の危機が、今やそのまま現実となった・金融不安は日に日に深刻さを加えて、未だ解決のメドが立たない。
驚くべき政治の怠慢といわざるを得ない。 年間一○○兆円に達する不動産相場の暴落を食い止めない限り、一○兆円や二○兆円の財政投融資を積み上げても、焼け石に水となる。
デフレスパイラルに落ち込む恐怖は、八年前に十分予想することができた。 私は一九九三年から八年間、毎週株式新聞に「クラブ9」というコラムを連載している。
その回目に、当時の三重野日銀総裁のバブル退治の金融政策を批判して、不動産相場のテコ入れなくして、日本経済の回復はない、と述べた。 三重野日銀総裁の「バブル退治」の思想は、任尚や松平定信の潔癖な秀才官僚の系譜を受け継いでいる。
過酷な金融引き締めを強行するには、うってつけの人物であった。 これもまた、時代が必要とした役回りであると思えばこそ、日本中が我慢した。
景気が暗転し、浮揚政策を必要としてからもなお、バブル性悪説で凝り固まった日銀総裁をいただいたのはミスキャストである。 銀行は縮み上がり、投資マインドも消費マインドも凍り付いてしまってどうにもならない。
大半の国民は「三重の世の清き流れに魚住まず、住田のバブル今は恋しき」と住田前総裁時代のバブル復活を待望している。 自由経済社会では、投機のリスクが大きければ大きいほど、成功した時の報酬もまた大きい。
日本の銀行は歴史的に土地本位の金融システムを採用してきた。 銀行は昔も今も不動産を担保に取る以外に金の貸し方を知らない。
欧米では株式の発行によって調達した自己資本の経営が主流であるから、銀行借入れによる日本式経営はもう古いという批判がある。 私もまったく同意見であるが、理屈は理屈、現実は現実である。
エコノミストやマスコミの書生論に乗せられて、理想と現実を混同し、政治が現実からかい離していったから、金融不況が深刻になった。 アメリカには、ベンチャービジネスの登竜門であるナスダック市場に六○○○社が上場している。
上場以前に、上場を目指して相対で出資をつのっている企業がエンジェル市場には一○万社もひしめいている。 ベンチャービジネスには、ベンチャーキャピタルがある。
エンジェル市場の株主は天使のように優しいが、二○社に一社が上場にこぎ着ければ元は取れる。 大物の新規上場会社を当てて大金持ちになった投資家も輩出している。
日本では、マザーズやナスダックジャパンといったベンチャービジネスを対象とする株式市場が、今やっと生まれたばかりである。 ベンチャーキャピタル市場はまだ未成熟で、現実には、中小企業は資金調達を銀行に頼らざるを得ない。
巨大企業でも、銀行借入れを資金繰りのベースとする企業が多い。 土地本位の金融システムは良いか悪いかではなく、避けて通ることができない、日本の歴史的な現実なのである。
それゆえ不動産相場が暴落すると、企業の担保力が激減し、金融システムの資金パイプが寸断される。 銀行は融資した企業に、追加担保の差し入れか、資金の返済を迫る。
多くの企業が不動産市場から一斉に資金を引き上げるのだから、需給関係が悪化して、不動産相場がスパイラル状に下がるという悪循環にはまり込んでしまった。 貸した資金を回収することができなければ、銀行は不良債権をかぶることになる。
九○年代の一○年間に、大手銀行だけでも累計六八兆円に上る巨額の不良債権を償却し、別途一八兆円の貸倒引当金を積み立てた。 国家がこれまでに注入した支援金も二五兆円に達ししかもなお不動産相場が下げれば、新たな不良債権の追い討ちを受ける。
銀行業界に、年間一○兆円の不良債権の償却を一○年間にわたって強制すれば、どんな優良銀行でもいつかは疲弊して倒産する。 もし、不動産価格がいったん反騰に転じれば、不良債権は一転、拡大から縮小にデフレスパイラルからインフレスパイラルへさらに銀行は不動産の担保価値が上がるから、融資金額も縮小から拡大に転じる。
不動産市場の資金量が増えて、不動産価格がまた上がるという好循環が始まる。 銀行のデッドストックとなっていた担保不動産が流動化して、マネーサプライが増える。
増加したマネーサプライは設備投資や消費に回り、株式市場をうるおし、不動産市場に回帰する。 そのとき、日本経済を圧迫してきた資産デフレが資産インフレに変わり、日本固有の土地本位の金融スシテムが再び威力を発揮する。
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